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Channel: 車の運転のコツ

ペダル踏み間違い事故の根本原因

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AT車による踏み間違い事故が止まりません。ひとつのターニングポイントになると思われた、池袋でのプリウス暴走事故の後でも、現在に至るまでほぼ毎月のように全国でコンビニや店舗にAT車が突っ込んだというニュースが報じられています。

以前までは、高齢者の操作ミスや判断ミスが主要因であり、免許返納とセットで語られることも多かったものです。しかし、現在では若者も中年も高齢者も、そしてタクシーや路線バスやパトカーまでもが踏み間違いによってAT車を暴走させており、車側に問題があるのではないかという向きも出て来ました。そこでメーカーやメディアが進めた対策は、誤発進抑制機能という、テクノロジーによる解決方法でした。しかし、これもまったく完全ではなく、テクノロジーを搭載した車でも踏み間違いによる事故を起こしているケースが複数報道されています。

このように、表面的な報道や対策に終始しがちなのがAT車の踏み間違い事故です。しかし、本質的な議論を進めているネット記事も散見されます。そのうちのひとつを今回はご紹介します。




以下、Joe & Santaro「踏み間違い事故はなぜ起こる?(FAIL CATASTROPHIC)」より抜粋して引用

(前略)アクセル(A)とブレーキ(B)は真逆の作用をする。2ペダルの間隔は数cmほどしかない。それらを右足だけで、目で見ずに踏み替える。そこで、例えば以下のような間違いが起これば暴走となる。

(1) 緊急時に「あっブレーキ!」と慌てて踏んだら、アクセルだった・・・(中略)

こんな操作方法が世界標準なのは、歴史的経緯と、ATとMT(手動変速)車が併存するのでやむを得ない面がある。MT車はアクセル/ブレーキ/クラッチ(C)の3ペダルを、左足でC、右足でA/Bを踏み替えるが、これには合理性がある。パワーアシストのない時代は、B、Cはとても重く、足で操作するしかなかった。Aは走行中ずっと操作し続けるために、やはり足で踏む方式に収束した(バイクで長時間走行すると、手でひねってアクセルを操作し続けるのはけっこう疲れる)。

A/B/Cの3ペダル方式は、左足のお陰で、それほどマズくはない操作法である。「Fail Relieved」ぐらいであろうか。停まるときは、ブレーキに加えて、クラッチ操作が伴う。左足がクラッチを踏めば、駆動力は切られる。ブレーキを踏めずに追突したとしても、惰性でぶつかるので、被害は比較的軽くなる。発進ではクラッチをゆっくりつなぐので、暴走はまず起きない。左足も使うので、ドライバーはきちんとシートに座り、右足だけ位置がずれて踏み間違う可能性は小さい。ということで、MT車主流の時代には、踏み間違い事故が社会問題になるほど多くはなかった。

AT車では、左足を遊ばせ、右足だけで操作するように教えられる。左足が果たしてきた「駆動力を切る」歯止めがなくなり、わずか数cmほど足がずれただけで奈落の底に落ちる、極めて危険な操作方法になってしまう。それでも、人間の適応能力は素晴らしいもので、多くの運転者は全く間違えることなく操作している、・・・ただし事故を起こすまでは。

数10年にも亘って優良運転手だった方が、たった一度の踏み間違いで、数人を死なせてしまうのがこの事故の恐ろしいところである。(後略)


この記事にある通り、AT車に踏み間違えがなくならない根本的な理由は、設計の「手抜き」にあります。MT車が市場で支配的だった時代は問題がなかったのは、MTのために設計された操作系が設えられていたからです。ATが登場した際に、本来であれば操作系を一新すべきでした。

クラッチという安全弁がなくなり、ニュートラルポジションを使うことが激減することになるAT車に合わせて、ギアレバーもペダルも、最適な操作系に設計し直すべきだったのです。止めるという機能と加速するという機能の相反する操作系を同じ「ペダル」で「隣」に配置するのは明らかに誤りです。

このように明らかな設計ミスが起こってしまった背景には、AT車があくまでもMTの簡易版として登場したこと。市場でどれだけ普及するか未知数だったこと。それにより先行投資のコストが十分にかけられなかったことが挙げられるでしょう。その後AT車は、突然ではなく徐々に市場シェアを拡大していきました。これにより、大幅に操作系を設計し直す機会を逸してしまいました。

これらのツケを払っているのが、AT踏み間違い事故が頻発しているという現状です。そして、踏み間違い抑制機能というテクノロジーを進めようとするのも、どう見ても対処療法でしかありません。根本的な解決には至らないでしょう。

引用元の記事では、ナルセペダルという、いわゆるワンペダルや、両足で操作するいわゆる左足ブレーキを解決法のひとつとして紹介しています。しかし、これらも不十分でしょう。日本では免許取得後に運転を学ぶことができる、いわゆるドライバー教育の環境が皆無に近い状況だからです。

現状の操作系も変えられず、テクノロジーも決め手になり得ないのであれば、MTを進める方策がまだ現実的ではないでしょうか。特別な投資も必要ないはずです。


日産サクラは脱炭素の切り札か?

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日産の軽自動車初となる電気自動車(BEV)のサクラが受注好調ののようです。先行していた歴史がある三菱との協業となりますが、日産の販売・サービス網による展開です。したがって、国内では初めてとなる普及価格帯でのBEVとなり、どのようにユーザーに評価されるのかが注目されます。

手が届きやすい軽自動車とはいえ、BEVの特徴として、自宅に車両向け充電設備がないと厳しいのが現状です。

確かに、ガソリンスタンドには大きく及ばないものの、ディーラーや高速道路のPA・SA、商業施設の駐車場などに急速充電設備が整ってきてはいます。しかし、これらは、あくまでも電欠の危機に瀕した際の、緊急救済的な意味合いのものです。自宅に充電設備がないのに、外出先での急速充電設備のみを使って運用するというのは現実的ではありません。

現時点でも、急速充電設備は便利な場所ほど混雑しますし、1台でも充電しているなら数十分はその機械を占有します。そして、充電がすぐ終わったらその車のオーナーが速やかに車を移動させる保証はありません。特に商業施設などでは運用がなかなか難しいようです。

また、そもそも急速充電中心では、バッテリーそのものの寿命に悪影響を及ぼすことが懸念されています。日産でも次のように呼び掛けています。


「必要以上の頻繁な充電を避けることで、リチウムイオンバッテリーを長持ちさせることができる。できるだけ急速充電を控え、できる限り普通充電を使用することを推奨する」(日産広報) https://www.itmedia.co.jp/business/spv/2209/02/news161.html


そして、ライフスタイルにもよりますが、多くの方は夜間に6時間前後の普通充電を行って翌日に車で出掛けるという形になるでしょう。自動車メーカーが、航続距離の長い車を作ろうとするほど、バッテリーを大型化させる必要があるため、充電時間も長く掛かることになります。

そして、車が大型になるほどBEVは非効率になります。大きな車体を運ぶために大きなバッテリーを積み、バッテリーそのものも重いため、バッテリーを運ぶためのバッテリーが必要になる、というように無駄が多くなります。

BEVの最適解は本来、小型コミューターであり、原付バイクに屋根がついた程度のシティコミューターにこそバッテリー+モーターがベストマッチすると考えられています。この視点からすると、軽自動車すら過剰ではあるのですが、現在でも狙った通りに普及しきれないテスラや日産リーフなどのBEVよりは成功を納める可能性はあります。

マクロ的には、脱炭素にはほど遠い、発電時のCO2排出やガソリンよりも大きな送電ロス、自然放電、火災時の難消化性と大量のCO2、廃棄時の有毒性など問題が山積しています。

BEVが普及したとして、これらをモニターする体制が整っているようには見えませんし、メディアも(個々の事例や事故は別として)統合的に報道しません。要するに、EVにした結果、脱炭素に本当に効果があったのかどうかをビフォー&アフターで比較検討するつもりはないのです。とにかく、世論がEV歓迎になってくれさえすればよい。そのような空気を敏感に感じ取って静観している人は多いでしょう。この意味でも、サクラの売れ行きと、その後の使い勝手を含めたオーナーの反応などの推移はひとつの注目点となっていきそうです。

電動キックボードの危険性

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都市部で近年、急激に見掛けるようになった電動キックボード。新しい乗り物ですが、見た目以上に速度が出るため、既存の交通とのトラブルが既に発生しているようです。特に、車を運転する立場から見た場合の危険性を、しっかり把握しておく必要がありそうです。

まず、電動キックボードとは、従来からあるキックボード、またはキックスクーター等と呼ばれていたものの進化形だと考えられます。

従来のものは子供用の小さいものを中心に、片足をボード部分に乗せて、もう片方の足で漕ぐというもので、歩行者よりも速く、自転車よりも遅いという程度のものが主でした。折り畳み式で非常に軽く、その利便性から通勤に使う人も見受けられました。速度もさほど出ず、動力源は人力であるため、あくまで歩行者に近い扱いであったのが従来です。

現在、徐々に広まっているのは、形状は従来のものを踏襲しつつも大型になってバッテリーを搭載し、モーターでタイヤを動かすというものです。共通点はそのくらいで、実際に市場に出回っているのは様々な種類があり、バッテリーの性能もモーターの性能も、またタイヤの性能やブレーキの性能も様々です。そして、道交法の改正を見据えた、灯火類を備えたものから、まったく道交法に適合しないものまで、まさに百花繚乱といった様相です。

多く見受けられるのは、レンタルの電動キックボードで、都市部のレンタルステーションで借りて、乗り捨ても可能となっているサービスの車両です。これらは、道交法にも適合し、ヘルメット装着も促して安全対策を行ってはいます。しかし、まだ十分であるとは言えないのが現状のようです。レンタルという性質上、不馴れな利用者が多く、都市部の道路を走行するための基礎知識、および安全意識が低い様子が見てとれます。

同じ道路を走行する自動車側としては当然、新たな交通手段を脅威としてみるだけでなく、その特徴を知って事故を起こさないようにする必要があります。ここで、特徴と危険性をまとめてみましょう。


★電動キックボードの危険性(車から見た場合)
1)サイズの割には速度が速い。
2)転倒時に怪我の度合いが大きくなりやすい。
3)音がほとんどせず無音に近い。
4)走行安定性、運動性能が低い。
5)初心者や安全意識の低い使用者が多い。


1)電動キックボードは実際に手にすると非常に重くしっかりした印象があります。しかし、外形は原付バイクに比べると非常に華奢で、車のドライバーからの視認性は非常に悪いです。印象としては歩行者が高速で動いているように感じます。その割には、原付バイクに近い速度が出ます。サイドミラーや目視で後方確認するのはもちろん、歩行者用の横断歩道を渡る車両もありますので、要注意です。

2)電動キックボードは、転倒しやすい乗り物だと言えます。原付バイクと違って、立ち乗りが基本となるため、重心が高くなるのがその理由です。さらに荷物を持つ場合、バックパックを利用する人が多いですが、それも重心を高くする一因です。そして、体が剥き出しという点はバイクと同じですが、バイクのように衣服や装備をきちんとしている人は少ない印象です。そして、横に転倒する場合は座っているバイクよりも立ち姿からの転倒になるため、怪我のリスクが高まります。そして、立ち姿勢のまま倒れると、道路側に大きくはみ出しますので、後続車が接触してしまうリスクも高いです。また割合は少ないですが、正面から転倒した場合は即死亡事故につながります。

3)原付バイクと違いエンジン音がしません。これはモーター走行車の特徴で、車でもEVやプリウスなどで歩行者に気づいてもらえず危険を感じた方も多いでしょう。車では電子音を鳴らして歩行者に注意を促す仕組みもありますが、電動キックボードにはありません。無音で原付バイクほどの速さで走る訳ですから、その危険性はイメージしておいた方がよいでしょう。

4)電動キックボードは車両としての運動性能は原付バイクに大きく劣ります。その原因は主にタイヤの大きさにあります。四輪であろうが二輪であろうが、どんな乗り物であってもタイヤで走行する乗り物である以上、運動性はすべてタイヤの性能に依存します。今後のタイヤメーカーの動向による部分ではありますが、現時点では心許ないものです。また、ブレーキ性能もメーカーによっては、ただタイヤにバーを押し付けるだけの簡易的過ぎるものもあります(きちんとしたディスクブレーキのものもあります)。現状での電動キックボードは、出せる速度と、外形や重心位置、そしてタイヤやブレーキの設計がアンバランスだと言わざるを得ません。

5)レンタル利用の場合に顕著ですが、気軽に乗れる従来の動力無しのキックスケーターの延長のようなイメージで乗るケースが多いようです。すると当然ながら、バイクに乗るような服装ではなく、街を歩くような服装で、街歩きするような意識で幹線道路を走ってしまうケースが出てきます。車のドライバーからみるとこれは脅威で、予測不可能な動きをするものと思って運転するしかありません。

以上のように、既に大きく危険性が叫ばれている中で、国はさらに電動キックボードを普及させる政策に出そうです。これから固まるはずの道交法の行方と共に、今後の動きに注目しましょう。最後に、電動キックボードの事故のニュースを引用します。


⚫電動キックボードで初の死亡事故

東京都中央区で25日夜、会社役員の男性(52)=東京都港区=が電動キックボードを運転中に転倒し、死亡する事故があった。

 警視庁が26日発表した。同庁によると、電動キックボードが絡む事故で死亡者が出るのは初めてという。

 月島署によると、事故があったのは25日午後10時45分ごろ。男性が中央区勝どき6丁目のマンション駐車場内で電動キックボードを運転中、方向転換して走り出そうとした際に車止めに衝突。前から倒れて頭を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。飲酒運転の可能性があるという。

 男性が乗っていた電動キックボードは、国の実証実験の一環で、認可を受けた事業者から貸し出されたものだった。キックボードは本来、道路交通法上の「原付き」という扱いになりヘルメットの着用が義務づけられるが、実証実験の場合はトラクターなどと同様の「小型特殊自動車」に分類され、特例でヘルメットの着用が任意となる。男性はヘルメットを着用していなかったという。(岩田恵実)



※なお、電動キックボードそのものを否定する意図はありません。仕組みとしてはシンプルで
量産性も高く、乗る楽しさもあるため、クローズドな専用コースで楽しむものであれば受け入れられ易いと考えます。車やバイク、自転車、歩行者が行き交う公道での走行を進めようとする政策は否定的に見ています。

EVで走行距離税の何故?

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EV(電気自動車、いわゆるBEV)の非合理性が、意外なところから明るみになりました。それは、新たな税金の仕組みづくりの場面においてでした。下記の記事をご覧ください。



10月26日、岸田文雄首相(65)の諮問機関である「政府税制調査会」が開いた総会で、自動車の走行距離に応じた課税、いわゆる"走行距離課税"などの検討を開始した。

「読売新聞」によると、総会では電気自動車(EV)の本格的な普及を見据え、自動車に関する税制などを議論。その際、出席した委員は「電動車が普及しても自動車関連諸税がこのままだと財源が十分確保できない。走行距離に応じた課税などを検討すべきだ」と指摘。

さらに、別の委員も「EVは政策的に普及させるために多額のお金がかかっている上、重いので道路への負担が大きい。エンジンがないからといって安い課税水準でいいのか疑問だ」と述べたという。

「現在ハイブリッド車の普及もあり、ガソリン税などの燃料課税は減収が続いています。今年度は3.2兆円で、'07年度と比較して約1兆円も減る見込みです。また、EV車はガソリン税のような燃料に対する課税がありません。そこで、走行距離課税によって財源を確保する狙いがあるとみられています」(全国紙記者)

「走行距離課税で税収を」という考えのいっぽうで、"若者の深刻な車離れ"が叫ばれて久しい。'21年度版の「運転免許統計」によれば10代、20代の運転免許保有者数は約1087万人。約1742万人だった'01年度版と比べると、20年間で実に655万人も減っているのだ。

引用元;女性自身



まず目を引くのは、「EVは政策的に普及させるために多額のお金が掛かっている」という点です。つまり、国が多額のお金を出さないと普及しないほどにEVというのは魅力がなく、ユーザーは求めていないことを表しています。資本主義においては、魅力的な商材が提供されることで消費が促されるのが基本であり、そこに政府の財政的介入が行われる余地はありません。従ってこの議論が成り立つには、「国民の税金を投入してでも廃止しなければいけないほど、ガソリンの内燃機関は環境に悪い」という前提条件が必要です。この点は本当に議論が尽くされているのでしょうか?

次に、「重いので道路への負担が大きい」という箇所。これは、車両が軽いほど、そして車体が小さいほど環境によいという物理的な視点に反しています。車両が重いというのはEVの特徴であり、物流をEVに置き換えようとするとどうしても付いて回る課題です。ある程度の車両重量を越えると、バッテリーを運ぶためにバッテリーを積むような矛盾が出てきてしまうからです。これは、従来の自動車重量税の考え方にも反しています。道路に負担が掛かる重い車両を減少させようという政策と矛盾が生じています。この発言から導き出されるのは、軽自動車のようなガソリンエンジンの小型モビリティがもっとも環境に良いということです。

最後に本論である、走行距離による課税を、というのは完全にナンセンスです。発言の文脈を見ると、ガソリンから税金が取れなくなりそうなので、EVからは走行距離で課税する、と見えます。しかし、おそらく動力に関わらずすべての車から徴収していく流れになるのではないでしょうか。その場合は明らかにこの議論から外れてしまいます。もしEVのみに走行距離税を課税するとなると、EVを国として普及させたいという政策と矛盾が生じます。財源がなくなるという懸念が語られていますが、このように自動車購入を躊躇わせるような税制にこそ、自動車離れを引き起こして結果、財源の喪失を招いているのではないでしょうか。

今回採り上げた記事はごく短いものですが、それでもこれだけの矛盾点をはらんでいます。いかに性急で強引に進めているのかが端的に分かる例ではないでしょうか。

誤解のないように追記しますが、EVそのものが悪い訳でも、EVをマイカーに持つ方が悪い訳でも全くありません。市場原理に従って、自動車も新しい技術が「適材適所」に産み出されるものであって、本当に良いもの、求められているものは多くの方から購入され支持されています。それは、環境への影響についても同様で、納得感のあるものであれば消費は自ずと進んでいるはずです。EVを否定する訳ではなく、議論が尽くされていない前提に基づいて、強引な手法で国民の税金を使おうとする姿勢に疑問を投げ掛けています。新たな税制は、自動車に乗る全員に関わってくることですので今後も注視していきたいと思います。

完璧な誘導~駐車場での事故を防ぐ

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皆さんは、家族など他人が運転する車を誘導することはありますか?自宅車庫や職場での駐車場などで、誘導する機会というのは時おりあるかと思います。そんな場面で時おり発生するのが、思わぬ事故です。

車庫入れ中というのは、さほど速度も出しませんし、運転手もミラーを見ながら慎重に操作するのが普通です。したがって事故の危険性など無いようにも思えますが、実は危険が潜んでいます。実際に発生した事故の記事をご紹介します。



【速報】中野署内で警察官挟まれ死亡 駐車場で車と壁の間に...

警視庁中野警察署の敷地内で、8日朝、警察官が運転する車が、誘導をしていた39歳の男性警察官を壁に挟む事故があり、この男性警察官が死亡した。

8日午前8時半ごろ、中野警察署の駐車場で、柔道の稽古に向かっていた男性警察官が運転するワンボックスカーが、後ろで誘導していた警視庁の警察官を壁に挟む事故があった。

被害者は、病院に搬送されたが、その後、死亡が確認された。

警視庁は、当時の状況を捜査している。

引用元;FNNプライムオンライン
引用注)個人名部分を一部削除



記事中の本件では、残念ながら死亡事故になってしまいました。同様の事故は、自宅車庫周辺などでも毎年のように発生していて、ニュースでも取り挙げられることがあります。なぜ、このような事故が発生してしまうのでしょうか。

ひとつには、危険を感じにくいということが挙げられます。低速でバックする車で、しかも大抵は家族や知人、同僚が運転する車です。その車に、まさか轢かれることはない、という安心感が多くの人にあるのではないでしょうか。

しかも、この手の誘導時における事故は、往々にして普段車を運転している人が誘導する際に、被害者となってしまうケースが多くみられるのです。これは、相対的に見て、普段運転するだけに、車の動きを知っているという自信が過剰な安心につながってしまっているということが考えられます。

これを防ぐためには、誘導の仕方を変える必要があります。多くの方はこのように誘導するのではないでしょうか?


●一般的な誘導
  • 誘導者が車の後ろに立つ
  • 運転手に窓を開けてもらう
  • 誘導者が「オーライ、オーライ」の掛け声と、手振りでバックで進行することを促す
  • 誘導者の目視により適切な場所に来たら「ストーップ!」の掛け声で停止を促す

ところがこれには、2つの危険が伴います。まず、誘導者が車の後ろに立つのは大変危険です。車の進行方向にまともに入ってしまうため、運転手の足首操作が僅にずれただけでも車と壁などの間に挟まれる危険性があります。また、ATでは常に踏み間違いの危険性をはらんでいますので、距離を取っていても危険です。

ふたつ目の危険は、誘導者の判断基準のみに頼って、主に声でのコミュニケーションとなってしまう点です。これは誘導自体の失敗にもつながるもので、特に普段運転しない方が誘導する場合は、判断が早すぎたり遅すぎたりすることが多くなります。これらの危険性を回避するには、次のように誘導することがお勧めです。


●完璧な誘導
  • 誘導者は車(後方)の横に立つ
  • 運転手に窓を開けてもらう
  • 両手を合わせたお祈りのポーズから、一気に両手を左右に広く離し、運転者のサイドミラーから見える位置に掲げる
  • 停めるべき位置までの距離を、両手の幅で表現する。つまり、バックで進む度に、両手の幅を狭めていく
  • 停めるべき位置に来たら、両手を合わせたお祈りのポーズを取る
  • 途中で危険を感じる動きがあれば、声でも誘導する「ストップ!」「もっと右へ」など。

完璧な誘導では、車の進行方向に立ちません(横に立つ)ので、轢かれたり接触したりする危険がありません。そして、誘導方法としては、声だけでなく、視覚によって目標までの距離を伝えますので、運転者が主体となることができます。運転者は窓から顔を出すのではなく、サイドミラーから誘導者を見ることによって、他の目視確認すべき部分(左後方や前方など)も適宜見ることができます。

特に仕事などで車を誘導する機会が多い方は、職場での危険を減らす意味でも、普段何気なく行っている誘導を見直してみてはいかがでしょうか。


プリウス式シフトと踏み間違い事故

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AT車によるアクセルとブレーキのペダル踏み間違いが原因の暴走事故は減る気配がありません。そして、特徴的にそうした事故で取り挙げられることが多いのがプリウスです。一部では「プリウスミサイル」などとも揶揄されるほど、踏み間違い事故のニュースで印象が強いということでしょう。

実際には特別、プリウスが踏み間違い事故を起こしやすいのかどうかは分かっていません。販売台数がトップクラスの車種ですし、比較的中高年ユーザーが多いということもあって、相対的に件数が多くなるということはあるかも知れません。

しかし、一部では踏み間違い事故の遠因となっているのではないかと言われているのが、プリウスのシフト操作です。少し長いですが、プリウスシフトの記事を引用します。



■操作複雑!? 未だ慣れない「プリウス式シフト」

 最近はクルマのギアを操作するシフト方式が多様化していますが、なかでも「電制式シフト」の操作が複雑な点について、ユーザーからは賛否の反応が見られます。
 
 では電制式シフトは、具体的にどういった仕組みなのでしょうか。

昨今では、クルマの走行状況に合わせてギアを選択するシフトレバー(シフトセレクター)についてさまざまなタイプが存在し、多様化が進んでいます。

 従来型のシフト方式は、レバータイプのものが一般的です。

 例えば運転席と助手席の間のスペースに設置された「フロアシフト」と呼ばれるタイプは、もっともポピュラーなシフト形式で、シフトレバーは走行状況に合わせてトランスミッションをレバーで変速させます。

「P、R、N、D...」などのモードが一直線に並んだストレート式や、ジグザグに動かすゲート式などが挙げられます。

 一方、最近ではハイブリッド車や電気自動車の普及とともにシフトレバーが小型化する傾向が見られます。

 例えば、2003年から発売された2代目トヨタ「プリウス」には、Pレンジは別のボタンで独立して設定され、そのほかのレンジへのチェンジは指先で操作ができる「エレクトロシフトマチック(電制式シフト)」を採用しています。このタイプは一部で「プリウス式シフト」と呼ばれています。

 プリウス式シフトは、プリウスのほかさまざまな車種にも採用されており、最近では新型「クラウン」にも全車に標準装備されます。

 そんなプリウス式シフトについて、SNSではとくに「操作が難しい」「初見殺しだな」「なかなか慣れない」など、未だ操作の複雑さについてユーザーからの反応が見受けられます。

 では誤操作しやすいのにはどういった要因があるのでしょうか。今回はプリウスに搭載されている電制式シフトを例に見ていきます。

 プリウスのシフトレバーは、基本的に「・」を起点に、右に動かした位置に「N」、右上に「R」右下に「D」が設定されています。

 シフトレバーには、各モードへの動かす方向が矢印で示されていますが、操作後はシフトレバーが「・」の位置に戻るため、現在どのモードに入っているか視覚的に確認することはできません。

 現在どのモードに入っているかは、メーターパネルにあるシフトポジション表示で確認することになります。

 従来のレバー方式では、動かすごとに一段階ずつカクカクと手応えがあり、シフトレバーもその位置で固定されていました。

 一方でプリウスの電制式シフトは、シフト操作自体がとても軽く、さらに操作後にシフトレバーが毎回もとの場所に戻るので、今どのモードに入っているかがレバーの見た目や手の感覚では分からないことが誤操作の要因のひとつに挙げられます。

 また、シフトポジションはDとRが前後に並んでいますが、ドライバーから見てDが手前、Rは奥にあるという点が、クルマのDで前進、Rで後進というクルマの動きと一致しないため、直感と反しているのではないかという指摘もあります。

 ユーザーのなかには、「B」レンジについて「乗ったことないとなんだろう?ってなる」「初めて見た人は混乱すると思う」という声も見られます。

 Bレンジは本来、エンジンブレーキの機能を果たしますが、初めて見た人はバックと勘違いしてしまうユーザーもいるようです。

 また、プリウスでは「P」はシフトレバーではなくボタンで操作するという点も、一般的なクルマと異なる部分です。

 トヨタの公式YouTubeでは、電制式シフトの操作方法について、シフトレバーを操作する場合は必ずフロントパネルにあるシフトポジション表示で、DやRなど目的のモードに変わったことを目視で確認するよう呼びかけています。

 とくに、クルマを乗り換えた当初や、代車やレンタカーなどで一時的にプリウスに乗ることになった場合など、これまで乗ってきたクルマとの操作の違いで戸惑うことがあります。

 シフトポジション表示で確実に目的のモードに入っているか確認することが、操作ミスを防ぐことにつながるといえます。

 このほか基本的な操作は、ブレーキを踏みながらシフトレバーをDまたはRなど目的のモードの位置に動かし、メーターパネルにあるシフトポジション表示が目的のモードに変わったことを確認して、シフトレバーから手を離します。

 Nにしたい時は、ブレーキを踏みながらシフトレバーを右に動かし、Nの位置でしばらく保持することでニュートラルになりますが、この場合もシフトポジション表示がNになっていることを必ず確認します。

 また左下にあるBは、走行中にエンジンブレーキをかけたい場合に使用します。

 なお、これはDからのみ操作可能で、シフトポジション表示にもDに入っている時しか表示されないため注意が必要です。

※ ※ ※

 プリウスのシフト操作は、一般的な車のシフト操作とは操作方法が大きく異なります。

 シフトレバーが操作ごとに毎回定位置に戻るため、手の感覚やシフトレバーの見た目では、今どのモードに入っているかがわかりません。

 操作ミスを防ぐためにも、操作ごとにメーターパネルにあるシフトポジション表示を必ず確認しましょう。

引用元;くるまのニュース



記事でも触れられていますが、プリウスのシフトに特徴的なのは次の通りです。まず、操作感が小さくて軽いこと。そして、シフト操作しても、レバーがすぐに元の位置に戻ること。そしてギア配置や表記が従来のAT車と大きく異なることです。これらの特徴すべてが、シフトミスにつながってしまうように思われます。

まず、ギアを含めてハンドルやペダルなど操作系の「操作感」は、その操作の重要性に見合うべきです。

例えば、運転席で一番大きい操作系はハンドルです。前輪を動かして、車両が動く方向を変える、という動作は重大な操作です。大きく、両手で操作しなければいけないハンドルは、その舵を切るという重大性に見合う操作感になっています。近年では電動パワステで軽い操舵のハンドルも多いですが、ある程度は重い操作感であるべきです。なぜならそれが直感的だから。

加速やブレーキという同じく重要な要素を司る操作系も、足踏み式ペダルという、とても古典的で直感的な操作系になっていて、重大性に見合っています。

この考え方でいくと、シフトはどうでしょうか。駐車ギアから前進ギアに変える。前進ギアから後退ギアに変えるという操作は、かなり重大ではないでしょうか?間違いが許されないほどに。重大性において、エアコン操作などとは訳が違います。

ところが、近年ではプリウス式シフトに代表されるように、AT車のシフトはどんどん小さく、簡略化される方向にあります。MT車と違って、電子的なスイッチに過ぎないAT車のシフトは、レバー形状でなくても動作することが可能です。従って、理論上はボタンだけでも動作しますし、タッチパネルで操作することも可能でしょう。実際にトヨタ、ニッサン、ホンダや、欧州車の一部でもボタンのみのシフトが登場してきています。この背景には、車内空間を広く、快適に、デザイン性高くという要望から来ているのでしょう。

しかし、レバーを無くすというのは技術的には出来る、という話であって、するべきだという話ではありません。車両が前進するのか、後退するのか、駐車するのかといった重大な運転操作に見合う直感的な操作系であるべきです。直感的な操作感であれば、運転者が漫然としていたり体調を崩していたり、高齢者であったりしても、人間の直感を頼りに、正しい操作が出来る可能性があります。このように、操作の重大性と、操作感がリンクしているというのはとても大切な視点のはずですが、電子化が進むにつれて見落とされてきている懸念があります。

シフト以外にも、プリウスには「音」に関する欠点が指摘されています。正確にはプリウスだけでなく、BEVも含めた電動のモーター駆動車に共通するものですが、台数が多いだけにプリウスがやり玉に挙げられがちです。それは、「アクセルを踏んでも、ブレーキを踏んでも、静かだ」ということです。従来のエンジン駆動の車では、もし踏み間違いを起こして、アクセルペダルを目一杯に踏んだとしたら、唸り上げるエンジン音ですぐに間違えたと分かるはずです。ドライバーはもちろん、周囲の人でも間違えたと分かるでしょう。ところが、プリウスをはじめとしたモーター駆動車では、アクセルペダルを目一杯踏んでも、咆哮を上げません。静かに暴走していきます。耳の機能が弱い方、老化で耳が遠くなった方には酷な仕様です。これが、操作の重大性と、操作感がリンクしていない、という例です。歩行者から見ると迫りくる車は凶器です。凶器が迫る場合は、その危険度合いに比例して大きな音が鳴るべきなのです。

今回の記事の例に限らず、電動化はすべて素晴らしいという方向付けがなされていますが、大切な視点は無くさないで欲しいと思います。パソコンが使いにくいだけなら大きな問題はないかも知れませんが、車が使いにくい場合は人命に関わる恐れもあります。先進的で新しい機能ほど、人間の直感に沿ったものであるかどうかを大切にして欲しいものです。

将棋AIから自動運転車AIへ

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2020年を越えてコロナ禍に入ってから、さほど頻繁に報道されることがなくなったのが自動運転に関するニュースです。一時期は米国でGAFAと呼ばれる世界的なIT企業群も、自動運転プログラムの開発をきっかけに車作りに乗り出すのでは?という憶測が出るほど盛り上がっていた自動運転。一般紙などの大手メディアでも連日のように大きく報じられていた時期に比べると落ちついた印象です。

しかし、世界的には数多くのベンチャー企業が、いろいろな切り口から将来を見据えて自動運転ビジネスに参入しているようです。もちろん、日本でもそのような動きがあります。下記に興味深い記事がありましたので引用してご紹介します。



「自動車業界の『ユニクロ』を目指す」...将棋AIの天才が、EVメーカーを創業した理由 TURING 山本一成氏が語る #1


強豪企業にどう立ち向かうのか?
「テスラを追い抜く(We overtake Tesla)」――そんな果敢なスローガンを掲げて自動運転EV(電気自動車)の開発に取り組む日本のスタートアップ企業がある。

大学や研究所、先端企業などがひしめく千葉県・柏の葉エリアに本拠を構える「TURING(チューリング)」。同社は、かつて将棋「電王戦」で佐藤天彦名人(当時)に勝ったAIソフト「Ponanza(ポナンザ)」の開発者として知られる山本一成氏が、自動運転研究者の青木俊介氏とともに2021年に立ち上げた会社だ。


2022年10月、AI自動運転走行による国内初の北海道一周長距離走行実証を行った

TURINGは単なる自動運転やEVの技術開発ではなく、いずれは年間100万台以上のEVを量産する完成車メーカーを目指す。現在、EV売上首位の米テスラに狙いを定めた冒頭のスローガンには、その思いが込められている。これに向けて今年7月には、日本のベンチャーキャピタル(VC)などから総額10億円の出資を受けた。

しかし世界的なEVブームが巻き起こる今、そのテスラを筆頭に中国や欧米などの大手自動車メーカーがすでにEVを量産し、世界市場での足場を固めつつある。

また自動運転では、グーグルの親会社アルファベット傘下の「ウェイモ(Waymo)」などハイテク企業が、米サンフランシスコ市街地で無人運転タクシーの試験サービスを開始するなど、商用化に向けた準備を着々と進めている。


これら先行する一群の強豪企業に、巣立ったばかりのスタートアップTURINGはどう立ち向かっていくのか? その戦略や意気込みを、同社CEO(最高経営責任者)の山本氏に聞いた。

やまもと・いっせい 1985年生まれ。愛知県出身。東京大学での留年をきっかけにプログラミングを勉強し始める。その後10年間コンピュータ将棋プログラム「Ponanza」を開発、佐藤天彦名人(当時)を倒す。東京大学大学院卒業後、HEROZ株式会社に入社、その後リードエンジニアとして上場まで助力した。現在、名古屋大学特任准教授・愛知学院大学特任教授も兼任。

難しいかもしれないが「やれないことはない」
――まず、2017年にポナンザで佐藤名人(当時)に勝利してから、2021年に自動運転EV開発のTURING社を起業するまでの経緯をお聞かせください。

それまで将棋プログラムを10年以上かけて開発してきて、ついに名人に勝ちました。それは確かに大きなことですが、それ以上に大きなことは何かと考えたとき、日本のGDPから見て大きな産業はクルマです。ただ、私は基本的にソフトウエアを開発してきたので、クルマをつくろうとすればハードウエアの知識が若干不足していました。

そんなとき、(共同創業者で現CTOの)青木俊介さんと出会いました。もともと(米国の)カーネギーメロン大学で自動運転の研究で博士号を取得された方ですが、彼も何か(事業を)やりたそうでしたので、「じゃあ一緒にやろうか」ということになりました。


しかし、すでにアメリカや中国ではEVや自動運転を手掛けるスタートアップ企業がたくさんあります。そこにあえて我々が参入すべきかどうかというのは、正直、ちょっと考えました。確かに難しいのはわかりましたが、「合理的に考えて、必ずしもやれないことではない」という結論に至り、今の会社を立ち上げました。

――それまでのソフト開発者としての立場から経営者に転身するに際して、不安や恐れのような感情は持たれましたか?

全然、ありませんでした。それまで私はずっとスタートアップ企業のHEROZ(本社:東京都港区、2018年に東証マザーズ上場)で働いていましたから、そういう会社の雰囲気は知っていました。不安はなかったですね。

――御社の創業から1年あまりですが、今、社員は何人ぐらいですか?

社員は私ら経営陣も含めて全部で14人、そのうちエンジニアが10人です。これに加えて、インターンの学生が15人ぐらいですかね。

――山本さんは現在、経営者であると同時に、技術者としても自動運転などの開発に関与しておられますか?

いえ、全然。私は今、会社の経営に専念しています。

――技術開発は、CTO(最高技術責任者)の青木さんに任せているということですね?

と言うか、実質的には開発現場のエンジニアが主体になって進めている感じですね。

――となると、青木さんの役割は何ですか?

純粋に技術というより、マネージメントに近いところまで任せています。たとえば「公道で(自動運転車の)走行実験するときには、どの役所のどの部署に話を通さなくちゃいけないね」とか。

ちょろっと開発&上場で終わり、ではない
――では、逆に山本さんの役割は?

ひとつは会社の大きな方針を決めること。たとえば「わが社はエンド・ツー・エンドでクルマをつくりますよ」とか。もうひとつは「人の採用」です。さらには、お金(開発・運営資金)を集めてくること。先ほども申し上げたように、今は私自身が開発現場でコーディング(プログラミング)するようなことはないです。

――つまりエンジニアとしてポナンザを開発していた当時の経験が、今の技術開発に直接活かされているわけではないんですね?

正直、「(TURINGの事業では)将棋からは離れたいな」という思いはあります。ポナンザは私の頭の中でつくったものですが、この会社ではもっと大きなことをやろうと思っているから。そのためのスタッフも徐々に集まっています。たとえば上場企業の執行役員をやっておられた方、あるいは自動車業界では日産(自動車)出身のエンジニアもいます。

――日産から来られた方はなぜ、あえて御社で働こうと思ったのでしょうか?

純粋に自動車をつくりたいだけですよ。ここからは日産の悪口を言うわけではありません。あくまで一般論としてお話しますが、大手メーカーでは日々の書類仕事などデスクワークに追われることが多いんじゃないでしょうか。あるいは社内の政治抗争に悩まされることもあるかもしれません。

でも、ウチに来れば、毎日、開発現場でクルマづくりに没頭できる。そこに「EV」や「自動運転」の要素まで加わってくるんですから、今まで誰もやったことがないことを自分の手で実現できる。ここが(動機としては)一番大きいと思います。


引用元;現代ビジネス(後略※全文は引用元で)
https://news.livedoor.com/article/detail/23179443/



長い記事ですが、一部だけご紹介しました。記事は経済紙であり、自動運転そのものの特性や将来性についてのものというよりは、将来性のありそうなベンチャー企業の紹介といった趣です。そのため、世界に負けないという気骨は十分に伝わってきます。将棋の世界で、タイトルを持つプロに勝ったAIの開発者という肩書きも、メディアとしてはキャッチーに響くでしょう。

記事のなかで、(深く掘り下げられていないという点で)気になったことが2点あります。ひとつは、「人命」とどう向き合うかということ。そして、もうひとつは、AIの課題であるフレーム問題とどう向き合うかということです。

まず人命という言葉が語られていないことは非常に気になります。経済紙ですので、インタビューが経済方面に片寄っているというのは当然差し引く必要はあります。しかし、自動車メーカーを目指すということであれば、まずもって人命を最優先するということが、掲げられるべきでしょう(もっとも、既存の自動車メーカーでも疑念を感じるケースもありますが)。

AIの開発エンジニアとしては、将棋の分野で開発するシステムも、自動車に搭載するためのシステムも、開発するのは同じ線上にあるものかも知れません。しかし、最終的にそれを利用した結果は大きく異なるはずです。将棋AIに不具合がもしあれば、その対局が中断・修正・最悪は中止となるのかも知れません。しかし自動車のAIに不具合があれば、人命が失われる可能性が高い訳です。つまり開発の現場では同じようなものだとしても、最終的な結果は大きく異なる訳です。これに対する姿勢が述べられていないのは、記事としてやや不満が残ります。

そして、AIそのものの課題でもあるフレーム問題は、車の自動運転の大きな壁となっています。フレーム問題とはざっくりと言えばこうです。将棋のように升目の数が決められていて、それぞれの駒の動きも決められているような、いわゆる「閉じた系」の中では、ディープラーニングと呼ばれる学習がうまくいきます。しかし、道路交通のように、自動車、二輪車、自転車、歩行者それぞれの動きが決まっておらず、道路も新設されたり廃道になったり、天気によって路面状況が大きく変わったり、急激に電動スクーターが普及してきたりといった、いわゆる「カオス系」では完全に適切な動作をすることができないという問題です。

これに対する一般的な対処方法というのは、確率をできるだけ上げるというアプローチです。つまり、100%は無理だとしても、99%、さらにはできるだけ100%に近い動作を目指すというものです。しかし、当サイトでも繰り返し述べていますが、自動運転車を受け入れるかどうかを決めるのは、あくまでも人間です。プログラムのミスにより事故を起こす確率が数万件に1件まで減らせたとしても、その1件の心理的なインパクトはとても大きなものです。人間のドライバーのミスによって事故の被害にあった場合と、プログラムのミスによって無人(運転者がいないという意味)の車に轢かれた場合とでは印象が大きく異なります。多くの人にとって、機械に命を奪われるということが潜在的な恐怖になっていることは、SF映画でロボットとの闘争もの(ロボットが人間に牙を向くもの)が定番になっていることからも分かります。人間が運転する車よりも、システムが運転する自動運転車の方が事故率が低くなれば、自動運転車は一気に普及するはずだ、と考える開発者が多いようですが、こうした心理的視点が抜けているのではないでしょうか。

この意味でも、自動運転車を実現して普及させるには、十分過ぎるほどに時間を掛けることが必要です。ライバルとの争いから拙速に開発をして、死亡事故を起こしてしまうようだと、結局消費者の疑念を買って、自動運転車を受け入れる下地が遠退いてしまうだけです。慎重に慎重を重ねるべき自動運転の分野において、今回の記事のように、先を急ぐ姿勢は押さえぎみにして欲しいところです。

自動運転配達ロボが列車と衝突

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自動運転技術の開発競争が進んでいるなかで、欧米での小さな事故が一部で話題になっていました。自動運転されているのは車ではなく、配達用の小さなロボットです。記事を引用してご紹介します。


■配達ロボットが列車と衝突

欧米では配達用自動ロボットの運用が始まっている。ちょこまかと、荷物を積んで走っている姿はかわいくて、うっかり擬人化してしまいそうになる。

だが擬人化してしまうからこそ応援したくもなるし、アクシデントに見舞われると胸がチクチク痛んだりもする。

お客様の元へ、熱々のパスタ料理を運んでいた配達ロボットだが不慮の事故に見舞われてしまった。「早くお届けしなきゃ!」と焦っていたのか、貨物車両と衝突してしまう。

線路脇にいた仲間のロボットたちは悲劇の現場を目撃して、唖然としてるっぽく見える。

これらの小さな配達ロボットたちは、料理を顧客に届ける自走式の自律型デリバリーロボットだ。彼らは熱々のパスタを乗せて料理を運んでいたそうだ。

途中線路があったのだが、1つのロボットが生き急いでしまったようだ。左右確認を怠ってしまったようで、貨物列車と追突してしまう。

現場で撮影していた女性も、ロボットに感情移入しているようで「お~!おおぉ~!」と悲しそうに声を発している。

列車 vs 小型ロボット。その大きさの差は歴然である。ロボットはそのまま完膚なきまで押しつぶされ、火花を散らしながらこの世を去っていったようだ。

「ごめんね、ぼくがちゃんとしてなかったから、お料理を届けられなくてごめんね...」もし彼が最後に何かを語ったとしたらこう言っていたのかもしれない。とか想像してしまうあたり、私もすっかり感情移入してしまっている。

翌日、事故現場には仲間のロボットたちが、せっせと花束を運び追悼を捧げだ。

「あいつ、おっちょこちょいなところはあるけど、仕事熱心ないいやつだったんだよな」、「熱々のお料理を早くお客さんに食べてほしかったんだろうな」と、涙ながらに語っていたという。ってところまでは余裕で妄想できたよ。

日本は結構ロボットに対して愛着を持つ人が多いと言われている。自動配達ロボットが普及したら、応援したり励ましたり、一緒に悲しんだりする人も増えそうじゃん?私がそうだけども。

引用元;カラパイア
https://karapaia.com/archives/52317304.html


記事によると、自動配達のロボットが実験的に稼働している国が複数あるようです。日本でも大手外食チェーンなどが、外国製の自動配達ロボを導入したりして、少しずつ自動運転が身近になってきている印象があります。

現状では、自動運転の車両が稼働しているのは、記事にあるような配達ロボやレストランの配達ロボ、物流倉庫内での自動走行ロボなどのマイクロ車両に限られています。そして、ごく低速域で稼働している点が共通しています。これは、万が一人間と接触しても軽微な事故で済むという考えに基づくものでしょう。

これが、今後は車の自動運転ということになると、途端に危険性が跳ね上がります。衝突時の被害の大きさというのは基本的に質量と速度に依るものであり、記事のようなマイクロ車両と、車では質量も速度も比較にならないほど大きいからです。

車両を制御するプログラム部分はAIが肝となってくる訳ですが、ここの部分は車両がマイクロ車両であっても自動車であっても大きな差はありません。現状では記事にあるような、想定されていない事故があちこちで発生しています。大きなニュースにならず、引用した記事のように微笑ましい1シーンのように伝えられている理由は、人的被害がなく事故そのものも軽微だからです。

しかし、今後車に搭載する自動運転のプログラムが同じ不具合により事故を起こした場合は結果が全く異なります。大きな人的被害をもたらす可能性が高くなります。実際、現状では自動運転とは呼びがたい運転支援機能を搭載するテスラ車では、世界中で人身事故を起こしています。

テスラだけでなく、欧米や日本、中国の自動車メーカーでは、開発競争にのめり込むあまり、人命軽視の開発姿勢が見てとれます。もしこのままの拙速な開発を続ければ、いずれ市場からの信頼を失うのではないでしょうか。

記事にあるような、軽量なマイクロ車両を時速5~6km程度の速度で運用する。これを数十年間続けて、安全面においての信頼を勝ち取る。その間にさらに大きな質量や速度に耐えうる信頼度の高いプログラムを開発する。この順序が、もっとも早く自動運転車両が普及するものではないでしょうか。もし拙速な開発を推し進めて、無人の車が人身事故を毎日のように起こせば、人々のからの信頼は決して得られないでしょう。大事な技術だからこそ、しっかり時間をかけて人命を第一にした開発で競って欲しいと思います。


極寒の中国でEVが大行列

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EV化の進む中国で、EVの問題点が露呈する事態が起きていたことが報じられました。

非常に長い記事で、なおかつ機械翻訳のようでやや分かりにくい箇所が多い記事のため、かいつまんで引用します。



22年11月21日、中国メディアの極目新聞は、大雪に見舞われた中国東北部で電気自動車(EV)の性能が低下し、バッテリー交換所に長蛇の列ができる事態が発生したと報じた。 

SNS上では多くのタクシー運転手が「EVのバッテリーを交換するのに数時間、数十時間並ばなければいけなかった」と愚痴をこぼしたと伝えた。 

また、同じくタクシー運転手の劉(リウ)さんも「10時間も並んでいた運転手もいると聞いた。夏は300キロ以上走れたのに、 
寒くなった今は200キロも走れない。来月の一番寒い時期は120キロくらいしか走れないだろう。雪が降るような寒い時はガソリン車がいい。給油すれば走れるのだから」と語ったことを伝えた。 

詳細はソース 2022/11/23 
https://www.recordchina.co.jp/b904848-s25-c30-d0193.html 


東北の大雪が電気自動車を凍らせる "心臓病"

最近、吉林省長春市で大雪が降った後、多くの電気タクシードライバーが、バッテリー交換のために交換所に並ぶのに何時間も、あるいは10時間以上かかったとネット上で振り返っています。

極道記者は、バッテリー交換はすぐに終わったが、行列に時間がかかったという運転手がいることを知った。(中略)

電気タクシーは急速充電が困難で、バッテリー交換も長蛇の列

11月11日夜、吉林省長春市では静かに大雪が降り、屋外に駐車していた車は銀色に包まれ、夜にはマイナス3度まで気温が下がりました。(中略)

王さんのタクシー、充電ポートが設置されていますが、なぜ充電に行かずにバッテリー交換を選択するのでしょうか? 王氏は、主な問題は時間のコストであり、車には充電ポートがありますが、急速充電をサポートしていない、充電は3時間以上かかり、毎日のバッテリーの交換待ち行列の時間よりも、彼は交換ステーションの数を増やすことを提案したと述べた。

"交換所の外で30台以上の長い行列を見ていたのですが、進行が非常に遅く、基本的に動かず、単に充電の山に行くだけです。" タクシー運転手の劉さんは、「実際、列に並んでいた運転手の多くも帰りたがっていたし、電気がないのは困る」と分析する。 寒くなると、バッテリーの持ちが悪くなり、ほとんどのドライバーはバッテリーを交換するほどのパワーは残っていません。(中略)

劉氏によると、夏場は300キロ以上走れるが、今は寒冷地での走行距離が200キロ以下、来月の最も寒い時期でも120キロ程度しか走れない見込みで、気温が低いと走行距離が短くなるとのことだ。
バッテリー交換は3分だが、キュー(引用者注;待ち行列のことだと思われる)は1時間かかる

20日午前11時、長春市南関区の交換ステーションで、記者は、バッテリーを交換する車は多くない、運転手は整然とした列で運転し、操作ガイドラインに2人のスタッフがいたことを指摘した。 バッテリー交換作業では、手術台が車を少し持ち上げ、下の軌道が手術台とバッテリールームをつなぎます。 機械は車の底にあるバッテリー室を開け、車の底からバッテリーを取り出し、フル充電した新しいバッテリーと交換します。 この間、ドライバーは車から降りる必要はなく、車の前のレールが上がればバッテリー交換が完了したことになり、全工程を3分以内で完了させることができます。(中略)

記者が気づいたのは、昼の12時、30分ほど動きが鈍く、後ろのドライバーもその様子を見て、おしゃべりや散歩、車内の掃除に降りたことだった。 "フル充電を待つことです" この動きにやや困惑気味のネットタクシーの運転手は、「毎日昼の12時ごろが、運転手の電気の入れ替えのピークだ」という。 前の車が動かなければ、列を飛び越えることはできない。車線は狭く、1台しか乗れないのだ。 それに、バッテリーは充電中だから、しばらく待っても問題ない、中休みの時間でもある。 彼は、車の後部が本当に電気を変更するために緊急である場合は、緊急車線のキューを設定する必要があり、ちょうど電気を変更するために車のフロントを待っているのはあまりにも受動的であることを示した。(中略)

電気自動車のオーナーは、冬に航続距離が大きく低下することを恐れています。

ご存知のように、東北の冬は半年で零下になる。 電気タクシーのバッテリー交換の難しさに対して、一部のネットユーザーは、冬は寒いから電気自動車にはあまり向いていない、電気自動車は暖房に電気を使う必要があり、電気の使用が早まる、さらに低温で電気自動車の走行距離が短くなる、東北の冬は電気自動車の使用にあまり向いていない、と指摘した。

引用元;极目新闻 
http://www.ctdsb.net/c1476_202211/1575061



この記事は冗長なほど長い記事ですが、中国の自動車事情をリアルに知ることができるものです。

まず背景として、現在世界中で政府主導的に進められているEV化の波は、多分に中国の意向が関わっています。それは環境や健康に関する国際機関の資本関係に中国が大きく関わっていることや、中国が掲げるいわゆる中国製造の政策にも符号するものであることから明らかです。中国で自動車の高精密機械、つまりエンジンやトランスミッションの製造は困難だったとしても、EVであれば可能になります。バッテリーの製造においても、質より量で勝負すれば日本を上回るでしょう。もちろん、この他にオイルマネーや発電エネルギーの政治的な駆け引きも多分にあるでしょう。

いずれにしても、国家政策的に世界の先陣を切ってEV化を進めている中国では、タクシーもEVになっています。そして、記事にあるようにバッテリーそのものを交換する形式で燃料補充しているようです。これは、電動自転車のバッテリーとは違い、非常に大きく重いバッテリーとなるため人力での交換はもちろん不可能で、リフトを使っての半自動での交換となるようです。それを2人のスタッフで交換する体制を取っています。この交換作業を待つために、大雪というバッテリーへの負担が大きい気候条件もあってか大行列ができてしまった、というのが記事の趣旨です。

確かにカートリッジを変えるかのように、バッテリーごと交換すれば3分程度というガソリン車とも変わらない速度で燃料補充ができます。しかし、記事ではその問題点も明るみ出ています。まず日本ではガソリンスタンドに少なくとも2~3台分の給油機が並んでいるのが普通にも関わらず、中国のEV用バッテリー交換システムでは、1台分のみであるということ。これに2名のスタッフがついているということです。

恐らくですが、これは根本的には解決が難しいものになるでしょう。交換台のシステムが進化して無人化することは可能かも知れませんが、交換台そのものを何台も増やすというのは難しいのではないでしょうか。それは費用面や所用面積といったことだけではなく、安全面においてです。

確かに交換台の台数を増やすことで同時に受け入れ可能な車の台数は増えるかも知れませんが、その分充電済みおよび使用済みバッテリーを保有する台数も多くなるはずで、これ自体が大きなリスクだからです。電気自動車に積まれるリチウムイオンなどのバッテリーは容量が大きい代わりに発火や爆発などのリスクも高いのは周知の通りです。大量に高密度バッテリーを在庫しておくことは、それだけ発火のリスクは高まり、しかも同じ場所に在庫していれば、誘爆して延焼することは必至です。そして、この種のバッテリー火災の場合は消化は非常に困難です。恐らくこれを避ける意味でも、交換台1つの1ラインのみでの運用としているのではないでしょうか。

このように、バッテリー交換方式を運用すると、需要集中により極寒の中での集団立ち往生というリスクを含むことが分かりました。しかも、この立ち往生では、暖房を使うのを躊躇してしまうという問題点もあります。EVではガソリン車のようにエンジンの排熱を暖房に使うことはできません。このため、冷房も暖房も大量に電気を消費するため、電気を走行に残しておくか冷暖房に残しておくかという競合が発生します。さらに記事にあるような極寒の場所では、バッテリー交換台そのものも凍ってしまい、機械を駆動するためにまず別のエネルギーを使って暖めなくてはいけないことも分かりました。

もう1点記事から分かるのは、自宅での普通充電には時間が掛かり過ぎて敬遠されがちだということです。自宅にも普通充電設備があるにも関わらず、充電時間の短い急速充電を求めて外へ行く人が多いということです。高密度バッテリーは急速充電を繰り返すと、バッテリー寿命を縮めるため、基本的には普通充電が推奨されています。しかし、ほとんどの時間を自宅ガレージで寝かせておかなければならない方式は敬遠する人が多いのも頷けます。こうなると街での急速充電器は取り合いとなることが予想されます。急速とはいえ、ガソリンのようにすぐには終わりません。また急速充電を使っても電気残量が100%になる訳でもありません。こうなると、バッテリーそのものを交換する方式が求められる訳ですが、記事のように、その方式で運用するタクシーでも問題点が明るみに出ました。

やはりEVは、さまざまな種類の自動車の1オプションとはなり得ても、ガソリン車の代替品とななり得ないのではないでしょうか。いまの所、政治色が強く、エネルギー政策の駆け引きの道具としての意味合いが強いように思えるEV。使用する私たちの方では、あくまで従来通りに道具としての価値を正当に見極めてクルマ選びをしていきたいところです。

EVが炎上してドアノブが開かず

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電子化を急ぐあまり、安全性が疎かになる。これが近年、世界中に見られる自動車業界の傾向になっています。今回は、韓国のEV、つまり電気自動車の気鋭の車種であるヒュンダイ・アイオニックに起こった事故が報道されていましたので、引用してご紹介します。



■慶尚北道栄州市でアイオニック5が衝突直後に炎上...運転手死亡 目撃者、「ヒドゥン・ドア」に「ドアノブがない」と当惑 

走行中の電気自動車が構造物に衝突し、あっという間に炎に包まれて人命被害が発生する事故が相次いでいることから、電気自動車の安全性に対する懸念が高まっている。 

 慶尚北道の栄州(ヨンジュ)警察署の7日の発表によると、5日午後9時30分ごろ、栄州市下望洞(ハマンドン)付近を走行していたタクシー(車種はアイオニック5)が、スピードを保ったまま建物の角に衝突した。衝突からわずか5秒後には炎が上がって車両全体に広がり、70代の運転手は近くの病院に運ばれたが死亡した。 

 電気自動車のバッテリーから火災が発生すると、少なくとも2時間以上続く。水では鎮火できないため、バッテリーが燃え尽きるまで待つしかない。バッテリーパックが損傷すれば、内部の温度はあっという間に800度にまで上がって火がつく「熱暴走」が発生するためだ。この日の事故でも、車両火災は1時間50分間続いた。 

 完成車業界はこれまで、電気自動車の火災発生率は内燃機関車のそれに比べて低いと主張してきた。しかし、電気自動車は火災発生による被害が致命的なものになる。電気自動車のドライバーが車両火災を恐れる理由はここにある。今年6月に釜山(プサン)で発生したアイオニック5の火災が代表的な例だ。アイオニック5が高速道路の料金所の衝撃緩衝施設に衝突した直後に炎に包まれ、ドライバーを含む2人が死亡した事故だ。 

引用元;全文はこちら
http://japan.hani.co.kr/arti/economy/45332.html



この事故では、残念ながら犠牲者が出てしまいました。そして、近年の車の電動化に対して、重大な示唆を含んでいるように思います。それは、大きく分けて2つあります。まずは、EVそのもののリスクでもある、車両火災の問題です。そして、もうひとつは、EVに限らないことですが、安全性を検証しないままに安易に為される電動化です。ひとつずつ見ていきましょう。

まず車両火災は、兼ねてから叫ばれていたEVについて回る大きな未解決課題です。そもそも、バッテリーは、乾電池と呼ばれるような小さなものも含めて、経年劣化や衝撃による液漏れや破損、発火、爆発の恐れがあります。そして、その確率を、高精度の製造技術で下げることで、バッテリー事故のリスクを低減しています。したがって、どんなバッテリーもリスクがゼロということはなく、むしろバッテリー製造メーカーが林立すれば、それだけリスクは計り知れなくなるということが言えます。近年では中国韓国をはじめとしたアジアでの製造が多くを占めていますが、安全性を左右する製造時の精度は我々一般消費者には測りかねます。

さらに、バッテリーは容量を増やせば増やすほど、発火や爆発時の被害規模が大きくなるということも問題です。自転車やキックボードを駆動するような小さなバッテリーでも発火時は危険にさらされますが、EVのバッテリーともなると、容量が遥かに大きくなるため、被害は拡大してしまいます。また、いざ発火事故が発生してしまうと、消化が難しい点も事態をさらに複雑にします。記事にもある通り、ガソリンエンジン車の火災よりも、さらに致命的になる恐れが指摘されています。いまだこの問題が未解決のまま、市販化され普及しようとしている所に怖さがあります。

2点目の電動化に関する問題点は、EVに限りません。今回報道されている事故では、引用した箇所には記載がありませんが、「ドアノブが出ない」ことが致命的になったと言われています。これは、昔ながらのドアノブではなく、車体と一体化していて、一見どこにドアノブがあるのか分からないタイプのものです。ボタンやキーに連動して、ドアノブが電気信号によって飛び出てきて、そこに手を掛けてドアを開けるという方式です。車種によって仕様が違いますが、このような車種は増えています。これは、このような事故や災害時に乗員や外部の人間が(レスキューなどの目的で)ドアを開けようとした時にネックになる可能性があります。また水没や火災などで電気系統がダメになってしまった場合もドアの開閉に問題が出る可能性もあります。昔ながらのドアノブの方が明らかに直感的であるにも関わらず、このようにドア一体型のような電動ドアノブが採用される理由は、主にデザインです。高級車という位置付けを見せるためだったり、電動化された未来感を演出するためだったりするのでしょう。また空力に好影響を与えるためという理由も言われますが、これは僅かでしょう。いずれにしても、緊急時の安全確保よりも優先すべき内容には思えません。

電動化に関して、日本ではトヨタが保守的な姿勢に写っていて、「EV化で世界に遅れを取っている」などと言われます。国外では欧州も中国も米国も、強引なまでに電動化を進めているように見えます。しかし、日本にまで報道が伝わってきている通り、EVをはじめとした車の電動化は問題点を未解決にしたまま走りを加速させようとしています。しかも、安全性を最優先にしていないような設計の車も散見されます。トヨタがEVオンリーではなく適材適所の戦略で進もうとしているのは良い折中案だと思います。電動化が最優先ではなく、人命が最優先で開発が進むことを期待したいと思います。

EVで踏み間違い事故を起こしたら?

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以前も当サイトで紹介した、韓国でのEVによる火災事故の続報がありました。複数の情報ソースのよる記事の引用となりますが、一部をご紹介します。



12月5日、韓国で現代自動車(ヒョンデ)の最新電気自動車「アイオニック5」が事故を起こし、運転手の男性が亡くなった。建物の外壁に衝突した直後に車両が燃え上がり、火は2時間も消えなかったという。これはリチウムイオンバッテリーの熱暴走という、電気自動車に特有の事故だ。ガソリン車であれば、助かる命だったのではないだろうか。(ビジネスライター 羽田真代)
現代自動車の最新電気自動車
「アイオニック5」

 佐賀県小城市と日産自動車は、11月25日に電気自動車(EV)を活用した「脱炭素化及び強靱化に関する連携協定」を締結した。これは「走る蓄電池」となるEVを市民に積極的にアピールし、小城市としては「ゼロカーボンシティ」(脱炭素化)やSDGs推進(持続可能で強靱なまちづくり)を目指すというもの。日産自動車は同様の協定を、岐阜県大垣市や山形県南陽市など複数の自治体と結んでいる。

 電気自動車を推進するのは日産自動車だけではない。むしろ海外が先行して、日本の自動車メーカーは追随している印象だが、電気自動車にはガソリン車にはない特徴があるはずだ。そこを考えずに拡販することに問題はないのだろうか。......そんなことを考えていた折、電気自動車「アイオニック5」が事故を起こした。アイオニック5を販売しているのはソウルに本社を置く自動車メーカー・現代自動車である。現代自動車は2022年2月に日本に再進出、以前はヒュンダイの名で知られたが、今はヒョンデと呼ばれている。

https://diamond.jp/articles/-/314892

12月5日の午後9時30分頃、韓国の慶尚北道・栄州市(ギョンサンプクド・ヨンジュシ)で、ヒョンデの最新電気自動車・アイオニック5が事故を起こした。事故を起こした車両はタクシーとして利用されていたもので、運転手は71歳の男性であった。

事故を捉えた防犯カメラの映像を見ると、この自動車は坂道を暴走、商業施設前を歩いていた学生を間一髪のところで避けて建物の外壁に衝突した。衝突後、自動車は熱暴走(※後述)によって瞬く間に火の手が上がり、近くにいた住人10人ほどが消火器を使用して消火活動に当たった。だが、火は消えるどころか大きくなるばかりだったそうだ。その後、現場に駆け付けた消防隊員によって消火作業がされるも、白い煙が上がるだけで全く収まらず、結局、鎮火には約2時間もかかった。

 アイオニック5はデザイン性を重視し、ドアノブがドアと一体化している。そのため事故当時、近くにいた人たちが中に取り残された運転手を救助しようと試みたがドアを開けることができず、運転手の命を救うことはかなわなかったそうだ。

 消防当局は車両13台、消防士41人、警察車両7台を投入して火災を鎮火させた。鎮火した後の自動車の写真を見たが、外壁にぶつかったせいでボンネットは大破、火災によってドアは全て落ちており、白い塗装だったはずの自動車は黒く焦げていた。消防署の推算によると、今回の事故で4900万ウォン(約524万円)の財産被害を出したという。



詳しく分かった点は次のようなところです。まず坂道で暴走するようにして自損事故を起こし、それから間もなく出火、多くの救命作業、消化作業が行われながらも困難を極め、最終的には運転手の命と約500万円の損害を出してしまったということです。

この記事を見て最初に思い出されるのが、プリウスを中心としたハイブリッド車に頻発する暴走事故です。多くは、アクセルとブレーキの踏み間違い事故ですが、これはEVでも仕組み上起こり得ることであり、今後頻発することが懸念されるところです。さらに、EVにおいてはこの事故で分かる通り、難消化性火災につながる危険が高いというリスクが加わります。

踏み間違い事故が発生してしまうメカニズムは、当サイトで繰り返し解説している通り、電動化に根元があります。まずレバーではなくスイッチ化されたシフトノブがDとR、つまり前進と後退とを錯誤させます。バックするつもりが、前に進んでしまうということです。ここまでは、日常生活でもよくある「うっかりミス」です。しかし、この小さなミスをきっかけにして、「リカバリーへの焦り」が発動します。慌ててブレーキを一杯に踏んで、小さなミスを帳消しにしようと慌てます。このように慌てた状態で無意識に踏み込んだペダルが、実はアクセルペダルでした。車は最大馬力で猛然と加速していきます。こうして小さなミスが結果として重大なミスへとつながってしまう、という顛末です。

この流れは、アクセルを踏んでもほとんど音が出ないというハイブリッド車やEVにおいて、ミスに気づくことを遅らせます。ブレーキを踏んでもアクセルを踏んでも、同じように無音であれば、まるで「ブレーキが壊れた」とドライバーが勘違いしても無理はありません。もしガソリンエンジン車であれば、エンジンが咆哮を上げ、誰の目から見てもアクセルを吹かしていることは明らかになります。

このようにして、踏み間違い事故はコンビニエンスストアの駐車場など、日本の至るところで起こってしまう事故となりました。しかし、ハイブリッド車であり、バッテリーも比較的小さいものであることもあって、衝突事故の範囲に収まっています。

ところが、今回の韓国での人気EV車種による火災事故は、衝突事故だけでは済まなくなることを示唆しています。万が一、コンビニエンスストアのような店舗に突っ込んだのがEVであったとしたら。そして激しい衝突により熱暴走を起こし出火・炎上したとしたら。被害規模は格段に大きくなってしまうことは想像に固くありません。韓国での事故では1台の乗用車の出火に対して、消防・警察車両が20台も出動したにも関わらず、被害を食い止めることはできなかったと報じられています。EVが増加した場合、毎月のように発生する踏み間違い事故に、新たな大きな脅威がプラスされてしまうのではないでしょうか。

使い勝手にも、業務使用の効率性にも、安全性においてさえ課題が大きいことが分かっているEVを、ここまで国を上げて、大手メディアを上げて推進する理由はいったいどこにあるのでしょうか。

大雪での立ち往生でEVは大丈夫?

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近年、冬場では毎年のように大雪による立ち往生が発生しています。雪道になると冬タイヤやチェーンなどの準備が必要になりますが、車列の中のどれか一台が準備を怠っているだけで、全体がストップしてしまいます。また、大雪ともなると、しっかりと冬装備していても、路面状況によってはスタックしてしまうこともあり得ます。こうなると、長時間を車内で過ごすことを余儀なくされてしまいます。こうした状況の中で不安視されているのが、EV車に乗っていた場合についてです。まずは下記の記事をご紹介します。



●「電気自動車、冬は無理」 EVドライバーの身を案じる声

大雪により、新潟県内で立ち往生が発生。柏崎市の国道8号では一時、渋滞が22キロに及んだ。
長時間車内での待機を余儀なくされる状況に、ネット上では、「電気自動車は大丈夫か?」とEVを心配する声が上がった。
EVには一酸化炭素中毒の危険がないというメリットはあるものの、ガソリン車に比べてぜい弱なのだろうか。

記録的な大雪となっている日本海側で発生した大規模な立ち往生。
本格的な冬到来を迎える中、想像を絶する豪雪に言葉を失うと同時に、移動の足の確保に不安が募っている。

渋滞は徐々に解消されつつあるが、一方で、ネット上で目立ったのはEVドライバーの身を案じる声だった。

「どれくらいバッテリー持つんだろう?」「今年も雪で立ち往生か... あれ起きちゃうと電気自動車なんて無力だよね」「少なくともこの国には向いてないわ」「電気自動車なら、凍死してた」「電気自動車を考えていたけど、立ち往生中のニュースを見てたら検討し直した方が良さそう」「電気自動車、冬は無理」といった心配の声が続出。
 
主な理由は、必ずしも車がフル充電されているとは限らないなかで長時間、身動きが取れないときのバッテリー切れを挙げている。
寒冷地ではバッテリーの減りが早いとされ、極限状態でどこまで車が耐えることができるのか、関心が高まっている。

政府はEVの普及を推進。購入時に補助を受けられ、税金も安いなどの優遇がある。欧米を中心に脱炭素の流れが加速しているためだ。

自動車に精通する整備士は、ENCOUNTの取材に、立ち往生でのEVについて、「にっちもさっちもいかなくなっちゃう。航続距離が長くてもあれだけの寒さの中でヒーターたいて待っていれば、携帯と同じで充電はなくなりますよね。充電がないと車は動かないわけで、EVクイックという充電スポットがありますけど、地方はインフラも整備されていない。車自体が発熱もしないだろうから、ボンネットの雪も解けにくいだろうしね。地方で100%のEVはちょっとまだ厳しい」との見方を示す。

「雪国行くときは、"ガソリンが半分になったら必ず満タンにしろ"と昔はよく教わりましたよね。世界を見ると、EVは都市圏に人気。地方に行っちゃうと、充電設備が少ないので、化石燃料とかディーゼルエンジンに頼るしかない」と続けた。

交通がまひしてしまったとき、EVはどうすればいいのか。最適解にたどり着くにはもう少し時間がかかりそうだ。

引用元;Yahooニュース



BEV(以下、EV)では、燃料は電気のみです。その唯一の燃料である電気は、寒冷地では次の2つで奪い合われることになります。それが、「暖房」と「走行」です。いずれも大口消費者で、大きくバッテリー残量を消費します。つまり、もしバッテリー残量が残り少なかったとしたら、暖を取ることを選ぶか、走ることを選ぶかを迫られることになります。

上記のように立ち往生の車列に巻き込まれてしまった場合、停車したままの状態ですから、暖を取ることを選びたくなります。しかし、暖を取るだけでも大きくバッテリー残量を消費するEVでは、それだけで燃料切れを起こす恐れがあります。つまり、せっかく立ち往生が回復した際にも、身動きが取れなくなるということです。

さらに、長時間の立ち往生が発生した場合に、燃料の救援があったとしても燃料補給が難しいことが懸念されます。最も早く燃料補給できると思われる急速充電器は、運搬して駆けつけることが中々難しいものでしょう。その場合でも最低限の燃料補給に20~30分掛かるため、その間は後続車両の足止めをしてしまうことになります。急速充電器ではない充電設備の場合は、さらに時間を要するでしょう。ガソリンや軽油燃料による発電機は携帯性に優れて充電に使えるかも知れませんが、CO2を減らすというEVのそもそもの立ち位置に矛盾が生じます。何よりも、「燃料補給中に時間が掛かる」というのがEVの最大の問題点なのです。

ガソリン車が立ち往生に巻き込まれた場合は、暖房と走行が両立できます。ガソリン車と言っても鉛バッテリーを搭載しているため、車内で電気製品は使えますし、暖房ももちろん稼働します。暖房はエンジンの排熱を利用するため、高効率になっています。燃料切れの恐れに対しても、救援者はガソリン携行缶を持ってくるだけで良く、補給時間も最低限の容量なら1分掛からない程度でしょう。

このように、明らかに使い勝手に難があるEVに対して、記事にあるような懸念の声が聞かれるのは当然です。政府は補助金を出して普及を試みていますが、政府の補助金やマスコミの宣伝をいくらつぎ込んでも、構造上のデメリットは無くなりません。

EV普及率はいまだ低いまま

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米国ニューヨーク州におけるEV車の市場状況が伝わってきました。

米国は州によって大きく文化も環境も異なります。そのため、一概に見ることはできませんが、日本国内の大手メディアからは垣間見ることのできない内情が分かります。特にEVを強力に推し進めているのは西海岸のカリフォルニア州ですが、東海岸では状況が異なる模様です。下記の記事をご覧ください。



ニューヨーク市は、環境に優しい都市を目指し2035年までにガソリン車の新車販売を段階的に停止するが、電気自動車(EV)の普及に必要な充電器の設置が課題となっている。

■普及率まだ1%未満

ウォールストリート・ジャーナルによると、ニューヨークでは路上駐車に頼るドライバーが多く、自家用充電器を設置できる車道や車庫のある家がないため、EVの普及を進めるには公共充電所が数千カ所必要になる。ただ、州の最新データによると市内で登録されている自動車のうちEVは1%もない。

市交通局は、30年までに充電に数時間かかる公共充電器を4万台、30分程度で充電できる急速充電器を6000台設置する必要があると試算している。しかし、都市部の密集地で充電器を増やそうとすれば、高価な不動産、許認可の問題、サプライチェーン(供給網)の遅滞などの問題が伴う。特にEVがほとんど走っていない現状では、急速充電が可能で、大量の電力を必要とする設備は建設や運用が難しくなる可能性がある。

ニューヨーク市とウェストチェスター郡では、EV充電器の導入に必要なシステム更新費用を電力会社コンソリデイテッド・エジソン(コンエド)が負担する予定だが、eモビリティー担当者によると、急速充電器に対する開発業者の関心は高く、すでに1000件の申請があるものの、充電サービス会社は何年も政府や電力会社からの補助金を必要とする可能性がある。「市場はまだ持続可能な段階にはない。これらの充電器を全て使い、稼働率を上げるには車の数が足りない」(同担当者)

USFrontline 2023年3月9日
https://usfl.com/news/134474



記事によると、ニューヨーク州では他のエリアと違い、大都市ならではの状況があるようです。車庫のある家があまりなく、駐車場よりも路上駐車をする車が多いために充電設備を整備できない点が課題として挙げられています。これは、東京などの日本の都市とも共通する部分があり、課題は似かよっているようです。そして、急速充電器の設置も同時に必要になってくるという点も挙げられています。

いずれにしても、EVの最大の特徴であり課題でもあるのが充電です。ガソリンや軽油のように、運搬や保存が比較的容易で、燃料充填も短時間で終えることができるエンジン(内燃機関)とは異なる特徴があります。電気は配線に頼る運搬が主で、バッテリーで一時的に保存できますが、自然放電も大きく保存性が良くありません。

また最大の問題が充填時間(充電時間)の長さにあります。記事では、EV車の台数が足りずに採算に乗らないというような論旨でしたが、実際に増えた場合はどうなるでしょうか。一般車においては、多くは夜間、営業車においては常時、同時に膨大な数の充電器が稼働することになります。つまり、電力需要をシフトすることが難しくなる訳です。電力においては、この同時性がポイントになり、電力網の脆弱な地域では、タイミングによっては停電が頻発することも十分あり得ます。

そして、営業車においては、大きなバッテリーをなるべく普通充電したいという需要が大きいはずです。そうすると、走行済みの燃料が少なくなった車両は、半日程度も車庫で充電したままということになります。このため、内燃機関の車両だったときに比べて保有台数自体を増やさなくていはいけなくなる訳です。そうしないと、営業車両の稼働率をこれまで通りに保てないのではないでしょうか。大半の車両が動かずに駐車場に停まったままでは、業務も滞ってしまうでしょう。

これらの充電における課題は、バッテリーにおける技術の大革新がない限り、正直言って厳しいものがあります。ガソリンエンジンの利便性に勝るものが出てこない限り、「地球環境のため」に使い勝手の悪いものを買うことはないでしょう。また、EVに絡んだマネーゲーム、つまり排出権取引や時価総額主体の経営、バッテリー利権、環境活動ビジネスなどの存在が、自動車ユーザーを白けさせています。地球環境に配慮という目標は立派ですが、結局は「誰か」に利益誘導されているだけで、我々は単に不便を強いられるだけではないのか。疑念が渦巻いているのが現状です。こうした現状を無視するかのように「○年後には全てEVになる」というような論調も見られますが、一度冷静に現状を分析すべきではないでしょうか。

MT車を運転できずに盗難失敗

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日本ではMT車が極めて少なくなってきている現状がありますが、それはアメリカや中国でも同様です。逆に言うと、これらの国以外ではMT車が主流ということす。しかし、日本と関係の深い国で同じような状況であることから、「MT車は過去のもの」という誤った捉え方が増えてきているのが国内の状況です。

一方で同じような状況にあるアメリカですが、MTを運転できないことは恥ずかしいこと、という価値観があるようです。きっかけは、車を盗難しようとしたものの、未遂に終わったある事件にありました。下記の記事をご覧ください。



■10代のカージャック犯、お粗末な行動がSNSで嘲笑の的に(米)

ワシントンD.C.の郊外にあるメリーランド州ジャーマンタウンのガソリンスタンド「Sunoco」で現地時間3月25日、車両強盗事件が発生した。しかし奪った車の中で犯人2人が"あること"に気付き、計画が失敗したことを悟り、すかさず車から飛び降りて逃走。被害者は無事に車を取り返すことができたという。地元のテレビ局『WBAL-TV』『WUSA9』などがこの一部始終を捉えた防犯カメラの映像とともに事件を報じると、犯人の間抜けぶりがSNSで話題になった。

モンゴメリー郡警察によると、事件があったのは3月25日土曜日の午後4時40分頃で、被害者の男性(氏名および年齢非公表)は給油を終えた車に乗り込もうとしていたところ、少年2人が自分に向かって走ってくるのを目撃した。2人はドアをこじ開け、被害者の男性を掴んで力ずくで引き摺り出すと「鍵をよこせ!」と脅したそうだ。

被害者は自身に危害が及ばないように抵抗しないで犯人に鍵を渡し、大人しく車から降りたという。しかしここで、驚くべき光景が目撃された。犯人らは車に乗り込み一度ドアを閉めたものの、すぐに車から降りてそのまま走り去ってしまったのだ。

実はこの車、今ではすっかり少数派となってしまったMT車(マニュアル車)の「スバルWRX」だったため、クラッチがあるMT車の操作を知らなかった犯人は車を動かすことができず、結局逃げるしかなかったようだ。自動車専門ウェブサイト『The Autopian』によれば、アメリカで目にするスポーツカーの中でもスバルWRXは8割近くがマニュアルトランスミッション搭載車だとし、この少年2人は車選びの段階で「大きな間違いを犯した」と評している。

なお通報を受けて間もなく現場に到着した警察官は、被害者から話を聞いて周囲を捜索。ガソリンスタンドの前の道の1キロほど先に犯人らしきティーンエイジャーを見つけたが近づくと逃走し始めたため、追跡して午後5時頃に2人を逮捕した。

警察の発表によれば、捕まったのは16歳と17歳の少年で、カージャックとカージャック共謀の容疑で「成人として」起訴されるそうだ。また発表時点では、保釈金なしで拘留されているという。

わずか1分ほどの犯行だったが、モンゴメリー郡警察が防犯カメラの映像を公開し、これを地元メディアが報道すると、SNSで少年らの稚拙な犯行が瞬く間に話題となった。

「間抜けもいいとこだね」
「笑えるー、でもそれよりも何よりも被害者が無事で本当に良かった」
「Z世代! クラッチが防犯アイテムになるとは」
「Z世代はMT車の運転どころか、(英文の)筆記体の読み書きも知らないからね(近年アメリカの多くの公立学校では筆記体を教えていない)」
「友人の2000年代シボレー・コルベットもMT車だったから盗難を免れたよ!」
「"このギアシフト、なんか緩んでてグラグラするぞ? 壊れてるのか?"みたいな会話が車内であったりして(笑)」
「これが昔の3速コラムMT車(ギアシフトがハンドルの付け根にあるタイプ)だったら、この子たち、大パニックになったんだろうな...」
「3速コラムMT車が復活したら、今の人たちどうなっちゃうんだろう」
「MT車なら"ながらスマホ"はやらなくなるわよ」

コメントの多くはMT車の運転を知らなかった少年をあざ笑うものであったが、中には成人扱いで起訴されるのに、映像の中の少年たちの顔にボカシが入っていることを不服とする厳しい意見もあった。

引用元;テックインサイト



記事にあるように未遂に終わった事件ですので、ニュースバリューとしてはそれほど大きくないはずのものです。しかし、思いの外SNSでの反響が大きく、海を渡ってニュースが届いてきました。

そもそもAT車が普及したのはアメリカの文化の大きく影響しています。欧州とはことなり、アメリカでは何でも簡単に、誰でも手軽に、ということを追求する土壌があります。ハンバーガーが生まれたりファーストフードが人気立ったりすることもその現れですし、イージーライディングを求める声からAT車が普及したのも当然の流れでした。日本でATが普及したのは、アメリカでの普及の後追いだと言えます。

そんな文化がありながらも、映画やサブカルチャーの影響もあって、MT車を「古いもの」と見なすような風潮は日本ほどありません。その結果、この事件では記事のように辛辣なコメントが集まる状況になってしまいました。

このニュースは、欧州や中東のように今でもMT車が中心の国から見ると、さらに信じられないかもしれません。車の免許を持っている、イコール、MT車を操作できるということを意味する国が大多数だからです。

これから教習所に通って免許を取得しようとする方にとっては、費用が安く日程の短いATコースが魅力に感じるかも知れません。しかし、将来的に車に関連する仕事に関わったり、一般企業でも海外赴任などによって、急遽MT車を運転する必要に迫られる場面も無きにしもあらずです。そんな時、最悪の場合は現地で初MT車にチャレンジしなくてはいけなくなります。教習所でMTコースにしても、金額や内容はさほど変わるものではありませんので、MTの操作も覚えて普通免許を取得する方をおすすめします。

自動運転バスの恐怖

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自動運転に関して、非常に危険な兆候が見られる報道がありました。一見すると非常にポジティブな、明るい未来の予兆のようなものを感じさせる記事なのですが。一体、どの辺りが危険なのでしょうか。全文を引用しましたので、ご覧ください。



「自動運転バス」が走る街では「家の前にバス停」が実現していた!導入2年以上で自動運転事故はほぼゼロ

 4月1日に施行された「改正道路交通法」によって、特定条件下での運転を自動化する「レベル4走行」が可能になった。これで、無人自動運転の車が公道を走れるようになり、各地で実用化に向けた実証実験がおこなわれている。

 そんななか、ひと足早く、自動運転のバスが公道を走る "未来の世界" を実現している地域がある。

 北海道上士幌町と茨城県境町、そして5.9ヘクタールの広さを誇る羽田空港に近い大型複合施設「羽田イノベーションシティ」(東京都大田区)だ。

 なかでも2020年11月の運行開始から2年が経った茨城県境町では、すっかり町民の足として親しまれている。

 運行開始前、境町にとって交通弱者への支援は急務だった。境町企画部地方創生課の担当者はこう話す。

「境町には鉄道の駅がなく、車が生活の足として必要不可欠です。そのため高齢者が免許を返納したくてもできない状況にありました」

 少子高齢化により、全国各地で同じような公共交通の課題を抱えており、境町も頭を悩ませていた。

「公共交通の充実について検討を進めるなかで、2019年11月に自動運転バスのニュース記事を目にしました。

 地方では、バス運転手のなり手が確保できず、地域交通の維持が困難になりつつあります。この問題を解決するため、自動運転バスの導入を決断しました」(同)

 こうして境町が連絡を取ったのが、自動運転バスを運行しているソフトバンク傘下のBOLDLY(ボードリー)株式会社だった。

 現在、境町で運行されている自動運転バスは、乗務員1人が乗車しているが、いずれは「レベル4走行」での運行を目指すという。同社の佐治友基社長がこう話す。

「旧来のバス路線は、自治体やバス事業者が都市計画や土地活用の計画などを考慮して、人通りが多くなりそうな場所を想定して決めていたと思うんです。

 でも、自動運転バスを走らせたい地域は、昔はバス路線があったが現在はなくなって困っている人が多い地域なので、お年寄りや子育て中のお母さん世代などに、どこに立ち寄るルートが必要か、さまざまな声を聞きました。

 すると、役場や郵便局や病院などの公的施設を結ぶルート以外に、学校や公園やスーパーなどにバス停を設置してほしいという意見が多かったんです。

 当社では、携帯電話を所持している方が町内のどこに何時間滞在したかなどをマップ上で見える化して、自動運転のルートがきちんと住民の方の "足" になっているか、町のみなさんと話し合いながらルートを決めています」

 現在の運行ルートは2つ。佐治氏によると、自動運転バスの運行によって思いもよらないメリットがいくつもあったという。まずはバス停の設置についてである。

「バス停はルートと同様、住民のみなさんと話し合いながら決めていますが、『私の家の前に置いてください』『隣の家のお母さんが病院通いをしているので、家の前にバス停があったらいいと思います』など、切実な声がありました。

 そのため、かなり実生活に即したバス停になっています。その際に非常に驚いたのが、住民のみなさんが自分の家の敷地内、民有地と呼ばれる場所にバス停を置かせてくださったことです。

 道路上に置くとなると行政手続き上、道路使用許可などが必要になってくるのですが、民有地なのでその必要はないですし、管理も非常に楽です。

 バスの停車場所だとわかるように、自分の敷地内の路面にプリントをしてくれている方もいます。こうしたご協力は本当にありがたいと思っています」

 スーパーや病院などは、当初、公道上にバス停を設置していたが、「雨が降ったときや荷物が多いときにバス停まで歩かなくてすむ」ということで、敷地内にバス停を置くことを許可。バスが入ってきて、出入り口からすぐ乗れるようにしているという。

「より使いやすいように、住民自身がバスの路線のデザインに関わっていることがすごい」と、佐治氏は話す。

 実は、自動運転バスの運行が交通安全の面でもひと役買ったという。

「自動運転バス導入初期、郵便局や病院など住民が出かける場所は交通量が多く、路上駐車が両側を埋めているような状態でした。そんな道路を自動運転バスが通れるのかと心配されてました。

 ところが、『自動運転バスを走らせます。路上駐車がないほうがスムーズに走れるのでご協力をお願いします』といった告知をおこなったところ、翌日ぐらいから、一気に路上駐車がなくなったんです。

 これは世界的に見ても珍しい事例で、たとえば中国などは『自動運転だから避けてくれるんでしょ』と突っ込んできたり、割り込んできたりするような町もあります。

 でも、境町の住民の方々は『交通弱者のためだから』と非常に協力的でした。その結果、警察からも路上駐車がなくなり、交通安全の面で非常によかったと評価されています」

"町民の足" として大いに活躍している自動運転バス。佐治氏も境町も驚いたのはその経済効果である。

「運行から2年が経過しましたが、これまで1万5000人以上の方々に乗車いただき、河野太郎デジタル担当大臣やドイツのバイエルン州議会など、自動運転バスに関する視察だけで、256団体、1401名(2023年3月30日現在)を受け入れるなど、町のPRにもつながっています。

 テレビや新聞などのメディアに取り上げられることも多く、BOLDLYが試算したところによると、およそ7億円もの経済効果が生まれています」(境町企画部地方創生課の担当者)

 佐治氏も声を揃える。

「視察にいらしてくださった多くの方から、『かわいい』『かっこいい』というような評価をいただきます。その結果スポンサーがつきましたし、ある企業からは町に1000万円の寄付がありました。

 とにかく使っていただこうと、自動運転バスは無料でスタートしたのですが、仮に運賃を100円としたら10万人乗車しないと1000万円にはなりません。

 境町の人口は約2万人ですから、こういった寄付はかなり大きいと思います。マスコミの方も視察にいらっしゃるので、ニュースや記事になったりします。

 すると、町外に住んでいるお孫さんが自動運転バスに乗ることを目的に遊びに来たりするんですね。ゴールデンウィークなどは、すごい賑わいですよ。

 結果的に住民の方も『境町に住んでいてよかった』と満足度も高くなり、おじいさんやおばあさんの目が輝いてくるんです(笑)。今や自動運転バスは "町おこし" のようになっていると思います」

 これまでに起きた事故は2件のみ。1件は自動運転バスが停車中に、バックしてきた一般車と衝突した事故で、一般車の過失が10割。もう1件は、町の所有地内での新人トレーニング中、「手動モード」時に施設とぶつかる物損事故だった。自動運転による事故はほぼゼロと言っていい。

 現在、時速20kmの運行速度で、計3台を運行している。

「利用者から『速度が遅い』などの声はありません。病院やスーパーに行くのに1分1秒を争っているわけではないからでしょう。

 反対に『そんなに速度を上げるな』と、おじいさん、おばあさんに怒られたこともあります(笑)。

 いまのところは住民の方からは時速20kmぐらいがベストという評価ですが、必要あれば速度を上げていきたいと思います」(佐治氏)

 気になる自治体の費用面だが、境町では「ふるさと納税」と補助金を活用しており、境町の持ち出しはゼロ。佐治氏は「自動運転バスは住民が育てていくもの」だと語る。

「これまで住民のみなさんがルールを守ってくれているので、事故も起きていません。でも、『センサーがあるから止まってくれるだろう』などと、急に飛び出したりすれば、事故が起きてしまいます。

 境町のみなさんは『交通弱者のために』と、ルールを守ってくれているんです。自動運転バスは交通弱者が多く、困っている人が多い地域にこそ、普及させたい。まさに、地域の住民が育てていくものだと思っています」

 境町企画部地方創生課の担当者も今後についてこう話す。

「『高齢者が買い物に行けるようになった』『これで免許を返納しても生活できる』『塾の送り迎えがいらなくなった』などの声をいただくとともに、『ほかのルートも拡張してほしい』『夜の便も運行してほしい』などのご要望もいただいています。

 今後も境町の "横に動くエレベーター" として、自動運転バスを地域のみなさまと育てていくとともに、『誰もが生活の足に困らない町』を目指していきたいと思います」

 自動運転バスは、交通弱者を助ける公共交通本来の役割だけでなく、町そのものに活気をもたらす大きな存在となっている。

引用元;FLASH



以上、長い記事ではありましたが、その危うさを感じ取れたでしょうか。何が危険かといえば、その「危機感の無さ」です。

報じている媒体が、自動車誌でも経済紙でもない報道機関であるという点は差し引かなければなりません。それでもなお、あまりにものほほんとした論調は、多いにミスリードにつながるものです。「怒られたこともあります(笑)」とありますが、これは人命に関わるプロジェクトです。

まず、大元の間違いは、ドライバー人材が足りないために、自動運転の実証を開始したという点です。

現時点での自動運転システムは運転補助の域を出ないものであり、無人でどこまででも行き来できるような完成されたものではありません。また、システムの幹となるAIにおいても、ChatGPTでも明らかになっている通り、完全なものではありません。むしろ錯誤の多さが問題となっています。研究用とやエンタメ目的のAIであれば、9割方正しければ大きな問題はないかも知れません。しかし、車の運転となると、即、人命に関わるものとなります。僅かなミス率でも許されません。この状況で実運用を開始するというのは、人命軽視も甚だしいと言える展開です。それに、ドライバー不足を解決するには、人材育成を含めて人員確保の政策を進めるべきでしょう。未熟な自動運転システムを拙速に展開することが解決策になると考えるのは明らかな間違いです。

また、自動運転車に協力すべく、地域の住民の献身により路上駐車が減ったと報じていますが、自動運転システムが未熟な証拠でしょう。人間がシステムに合わせなくてはいけない程度の段階で、自律型の人命を奪う恐れのある乗り物を展開すべきではありません。

さらに、運行速度は20km程度で、これを遅いととらえたような報道となっていますが、この認識も大きな間違いです。上述のように不完全なシステムでは事故率がゼロ%ではないため、エラー時の人命担保がなされてなければいけません。衝突時のエネルギーは速度の2乗に比例するため、人命を守るためには速度を落とすことが最優先されなければいけません。シートベルトを締めた状態で、人命を守ることができる速度はせいぜい7km。高めに見積もっても10km未満であることは必須でしょう。ましてや、記事では高齢者の乗客が前提で、地域にも高齢者が街行く地域でこのプロジェクトを行っている訳です。あまりにも認識が甘いと言えるのではないでしょうか。

他にも、重大な2件の事象に対して「事故はほぼゼロ」と言ってみたり、「横に動くエレベーター」と言ってみたり、単に認識の錯誤なのか、意図的なミスリードなのか判断に迷うような論調が目立ちます。全体的にのんきな空気感の記事でした。願わくば、オリンピックに乗じてPRしようとした自動運転車が、人身事故を起こしたような最近の事例からしっかり学んで、安全を最優先にした展開をして欲しいと思います。




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